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遺言書豆知識コーナー

遺言書の豆知識を紹介します

平成23年1月27日アップ

外国にいながら遺言書を作成できるの?

外国にいる日本人が遺言書を作成する場合,どの国の法律が適用されることになるのでしょうか?

遺言書は法的な効力を有するため,その様式等において法律の根拠が必要となってきます。その場合,外国にいるとどこの法律の根拠が必要なのか気になるところです。また,遺言書の何が法律の根拠を必要とするのかも考えなければなりません。

遺言書の何が法律の根拠を必要とするかは,「作成方法」「遺言に書ける法律行為の範囲」「遺言の成立要件,効力」等を考えなければなりません。

それぞれについてみていきますと

「遺言の作成方法」

遺言をする国の法律
遺言者が死亡の当時国籍を有した国の国籍
地方によって法が定められている場合は,死亡の当時住所を有した地方の法律
不動産に関しては,その不動産の所在地の法律

を根拠とすれば有効です。

「遺言に書ける法律行為の範囲」

基本的に被相続人の本国法を根拠とします。しかし,認知の場合や不動産の場合には,認知される子の本国法,不動産の所在地の本国法も関連してきますので注意が必要です。

「遺言の成立要件,効力」

上記のように,遺言は外国で作成することができます。しかし,その効力を日本で争うとなれば,日本の法律において成立の要件や効力が争われることになります。


認知症の人は遺言書を作成できるの?

認知症であるからだけの理由で遺言書が作成できないわけではありません。

遺言は遺言者が15歳以上で,能力を有していれば作成できます。この能力とは一般に意思能力をさします。

認知症の人も,進行し事理を弁識する能力に問題がある場合,無効となることがあります。

民法では制限行為能力者をそのまま遺言を作成できない者であるとしていません。制限行為能力者とは未成年,成年被後見人,被保佐人,被補助人です。

未成年でも15歳以上であれば遺言を作成できます。また,被補助人,被保佐人等判断能力が不十分,著しく不十分な人であっても,遺言を作成することは可能です。

ただし,成年被後見人の場合は,遺言を作成するには民法に定められた要件を満たす必要があります。

その要件は次の通りです。

○成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復していること
○医師が2人以上たちあうこと
○立ち会った医師は,遺言者が遺言をする時において,事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して,署名,押印すること

が必要です。

なお,立ち会う医師は,遺言の証人及び立会人の欠格事由にあたる者は立ち会うことができません。

上記のように,知的に障がいがあれば,そのまま遺言作成不能ではなく,成年被後見人以外であれば通常通り作成できます。

ただし,後日の争いになりそうな場合は,それを避けるために成年被後見人の要件を満たす手続きを踏んでおくほうがよいかもしれません。

視力,聴力などに障害がある人の遺言書の作成は?

聴力に障害があり,言語を発することの困難な方であっても,自筆証書遺言は自力で筆記が出きれば問題ありません。

公正証書遺言では公証人に口述し,その内容をもとに公証人が遺言を作成していきます。以前は後述のできない言語を発することの困難な方は公正証書遺言が作成できませんでした。

しかし,平成11年の民法改正によって,公証人が遺言に,通訳人の通訳または自書によったことを記載することで,後述にかえて作成することができるようになりました。

公正証書遺言では,公証人が遺言者の内容の確認を「読み聞かせ」よって行うことになっていましたが,これも,聴力に障害のある人のことを考慮し,内容の閲覧によっても確認をできることになりました。

視力に障害がある人は,自力での筆記が困難な場合,自筆証書遺言の作成はできません。自筆証書遺言は自書が要件であるため,パソコンの利用や点字は無効になってしまうのです。

そこで,公正証書遺言ですが,公正証書遺言は公証人に口述し,その内容によって書かれた遺言を公証人が遺言者に読み聞かせることで作成できるので,視力に障害のある人も作成が可能です。

同様に身体に障害のある場合であっても,体の一部(口,足など)で自書できれば,自筆証書遺言の作成は可能です。

自書が困難な場合は口述(通訳者による通訳も可能)ができ,読み聞かせ(通訳者による通訳も可能)が可能であれば公正証書遺言の作成ができることになります。

自筆証書遺言に必要な日付の書き方は?

自筆証書遺言だけでなく,遺言書には日付を書く必要があります。なぜ必要なのかは主に次の2点を明確にするため必要となります。

一つは遺言者が遺言書を書いた日において遺言を書く能力を有していたかどうかの判断材料として必要となります。

遺言書の日付の時点で,例えば,遺言者が認知症等で寝たきりになっていたかどうかを判断するためにその日付は必要です。

二つは遺言書が複数発見された場合に,抵触する部分については後の遺言書が有効になることになっています。そのためにも日付は必要要件となります。

さて,その日付の記載方法ですが,○年○月○日と明確に書いてあれば問題ありません。

縁起等を考慮し○年○月吉日など日付が特定できない場合,無効となってしまいます。また,○年○月のみで日付がない場合も無効となります。

ただし,○日と明確に記載されていない場合でも,○○の誕生日,結婚記念日,○○年文化の日など日の特定が可能であれば有効となります。

遺言書は遺言者の貴重な意思である点を配慮し,裁判所も特定できる日付は有効にしていこうということでしょうか。

遺言書の作成日が遺言者にとって重要な意味を持つ記念日であっても,○年○月○日と暦の上での日付を書くのが無難ではないでしょうか。

どうしても,その日の記念内容等を記載したい場合は,○○の誕生日である○年○月○日と記載することをお勧めします。


自筆証書遺言の押印,署名の方法は?

自筆証書遺言では全文,日付,氏名の自書,さらに押印が要件となっています。そのいずれかでも満たさない場合,その遺言書は効力を持ちません。

上記の中で氏名の自書,すなわち署名と押印は遺言書の作成者自身が自分の意思で書いたものであることを明らかにするための要件です。

署名については,氏名の自書であることから,自身の姓と名を書くことが原則です。しかし,遺言書を書いたのが誰であるかを特定できれば知ることができればよいとされているので,常に姓と名を書く必要はありません。

ただし,特定できなけらばならないので,同じ姓の者が多い,親族と混同する等の場合,姓だけでは特定できないことになります。

また,氏名とは戸籍上の者に限らなくてもよいとされています。遺言者を特定することができるのであれば,遺言者が用いていた通称,ペンネーム,芸名などでもよいことになっています。

押印については,現在は署名で事足りる場合が多いのですが,遺言に関しては法で定めてある以上,署名のみでは足りず,押印が必要です。

ただし,押印に用いる印鑑は何も実印でなければならないわけではなく,認印でもかまいません。

拇印のような指印はという点ですが,実印は不要とのことから認印に代わるものとして指印は認められています。ただし,指印は本人の指印であるかとの確認ができない場合もあるので,印鑑による押印をしておく方がよいと思われます。


緊急な時など,特別な時に遺言は残せるの?

特別な場合に残す遺言の方式を特別方式と言います。

特別方式の遺言には「危急時遺言」「隔絶地遺言」があります。「危急時遺言」も「一般危急時遺言」「船舶遭難者遺言」の2種類が,また「隔絶地遺言」にも「伝染病隔離者遺言」「在船者遺言」の2種類があります。

「危急時遺言」とはまさしく死の淵に落ちようとしている者が書く遺言で,「隔絶地遺言」とは一般社会から隔絶された状況におかれたものが行う遺言です。

「一般危急時遺言」を書くためには6つの要件が必要です。
①病気やその他の原因で死亡の危険がまさしく迫っていること。
②証人3人以上が立ち会うこと。
③遺言者が証人のうちの一人に遺言の内容を口頭で伝えること。
④口頭で伝えられた人が遺言内容を筆記すること。
⑤その筆記した者が遺言者と他の証人に読み聞かせること。(閲覧でも可)
⑥各証人が筆記された内容が正確であると承認し,これに署名押印すること。

「一般危急時遺言」は要件を満たしただけでは効力を生じません。遺言の日から20日以内に証人の1人等が家庭裁判所に確認を請求する必要があります。

「船舶遭難者遺言」とは,千波気が遭難した場合に,その船舶内で死亡の危険が迫った時にできる遺言です。この場合証人は2人以上必要ですが,遺言は口頭ですれば足り,一般危急時遺言のように読み聞かせや筆記の必要はありません。遺言の内容の筆記及び,証人の署名押印は別の時にすることができます。

「伝染病隔離者遺言」は伝染病などのために隔離された場所にいる者が警察官1人,証人1人以上の立会のもと作成される遺言書のことです。この場合,伝染病に関わらず,地震等の自然災害で隔離または交通遮断の状態である場合にもこの方法による遺言をすることができます。

「在船者遺言」は船舶にいる者が,船長または事務員1人,及び証人2人以上の立会の上で作成する遺言書です。この遺言は遺言者が普通方式の遺言をすることができるようになると,その後6ヶ月で遺言が失効します。

10月12日アップ

秘密証書遺言の作成方法と注意すること

秘密証書遺言とは遺言書の内容を秘密にしながら,作成したこと自体は明確にすることができる遺言書です。公正証書遺言のように公証役場で手続きをする必要があります。

具体的には秘密証書遺言書は自筆である必要ななく,署名押印さえすれば有効です。その書かれた遺言書を封書に入れて封をし,封印をします。

それを公証役場にもっていき,証人2人の前で,公証人に提出します。遺言者は公証人,及び証人2人に,その遺言書は自分で書いたこと,住所などを申述します。

公証人はその内容を封紙と呼ばれる紙に記載して,公証人,証人2人が署名押印します。

秘密証書遺言の長所としては,遺言書の存在を明確にしながらも,その内容は秘密にできる,自書に限らず,ワープロでも代筆でも構わない等が挙げられます。

短所としては,遺言書の形式はチェックされないので,形式不備で無効となる場合がある,遺言書の作成事実はは公証役場に記録されるが,遺言書自体は自分で保管するので紛失等の恐れがある等が挙げられます。

また,公証役場で手続きをするために費用がかかります。

秘密証書遺言は実務上あまり作成されてはいません。


10月4日アップ
公正証書遺言の作成方法と注意すること

公正証書遺言は公証役場に行って作成する遺言です。これを作成するには「証人2名の立会い」「遺言者による遺言内容の公証人への口授(口頭で伝えること)」「遺言者によって口述された内容を公証人が筆記,それを遺言者,証人に閲覧等すること」「閲覧後,遺言者,証人が遺言書に署名,押印すること」が必要です。

このような手続きで作成されますが,公正証書には次のような長所や短所があります。

長所は,「方式不備等による無効となる危険がない」「遺言内容の変造・もしくは遺言の紛失等の心配がない」「自筆証書遺言で必要とされる検認の手続きが不要」「自筆でなくても作成することができる」などがあげられます。

短所は「証人が必要になるなど手続きが面倒」「公証人へ支払う費用が発生する」「遺言内容が証人に知られてしまう」などがあげられます。

公正証書遺言には費用が発生します。費用以外に,公証役場には遺言者の実印,印鑑証明書,相続人の戸籍,不動産登記事項証明書など必要になってきます。あらかじめ,公証役場と打ち合わせをして必要な者等確認しておく方がよいでしょう。


自筆証書遺言の作成方法と注意すること


自筆証書遺言は自筆という前提条件があります。なので,ワープロ,タイプライターなどでの作成はできません。また,テープレコーダーでの録音なども要件を満たしていないことになります。

ただし,カーボン紙を用いることまで排除しているわけではなく,カーボン紙の使用は許可されています。

遺言者が病気等で手が震える等の場合は運ひつに他人の助けを借りたという点だけで当然に無効となるわけではありません。他人の意思の介入の形跡が見られなければ要件を満たすと判断されれう場合もあります。

自筆証書遺言には日付を書くことも要件となっています。もちろんこの日付も自書しなければなりません。日付は○月○日ときちんと日付を特定できることが望まれますが,「私の誕生日」など,日付の記載がない場合でも日付の特定ができれば有効となる場合もあります。

署名も必要です。ただし,自分の戸籍上の名前でなく,ペンネームなどでも,遺言者との同一性が確認できれば構わないとされています。

署名には押印も必要です。押印には実印である必要はなく,認印で構わないとされています。また,拇印等の指印でもよいとされています。




共同で遺言書を書くことはできるのか!?

2人以上の者が一つの遺言書に遺言を残すことを共同遺言と言います。共同遺言は民法によって禁止されています。

これは,同じ遺言書に,「2人以上の者がそれぞれに独立をして遺言を残す」「同じ遺言書で2人以上の者がお互いに遺贈しあう内容を残す」「2人以上の者がそれぞれの遺言の効果を停止条件などにする」場合もあります。しかし,いずれも無効となります。

共同遺言は,共同で行うことによって,遺言者個人の自由な意思に何らかの影響を与えあうこと,共同者の誰かが,遺言を撤回した場合の手続き上の問題,共同者のいずれかの部分に無効事由がある場合の問題などが理由でできないとされています。

しかし,自筆証書遺言で,封がしてあり,その中に2通の別々の個人の遺言書が入っている場合は,一つの遺言書ではないので有効となります。また,別々の遺言書がホチキス等でつづられている場合でも,容易に切り離すことができるので,有効となります。

いずれにせよ,遺言書を発見した場合は家庭裁判所で検認の手続きを行って下さい。手続等が分からない場合は「はあとふる法務事務所」までご相談ください。

遺言の仕方と作成上の注意とは!?

遺言の方式は民法に定められています。その方式を満たさない場合には,遺言としての効力が認められないために注意が必要です。これは,遺言者の真意を明確にして,遺言をめぐる紛争等を防止するためになされています。
ただし,方式さえ満たせば,15歳以上の人であればだれでも自由にすることができます。しないことも自由です。
さらに,撤回や取り消し,変更も自由です。自由といっても,推定相続人が遺言者に強要して撤回,変更等させた場合は,その推定相続人は相続人となることができません。

遺言は普通方式と特別方式があり,普通方式は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。それぞれの特徴などは本ホームページのそれぞれの所で説明しておりますので省略します。自分の環境,現状,状況など考え,自分に合った方式を選ぶのがよいでしょう。

遺言によって相続分や相続人を指定する場合は法定の相続分・相続人に関わらず,誰にどれだけ相続させるかは自由です。逆に遺言がないと相続人以外に相続させることはできないので,相続人以外に相続させる場合には必ず遺言が必要です。

遺言によって相続財産を指定する場合は,相続財産の把握を事前に行う必要があります。そのために,財産目録を作成するのがよいでしょう。

また,財産の指定をする場合には遺留分への配慮を忘れないようにしましょう。

遺言書は漢字・平仮名だけでなく,カタカナ,ローマ字でも構いません。意味さえはっきりとわかるのであれば,今風に略語を用いることも可能です。

ただし,意味内容が不明確になるような余語の使用は避けましょう。相続人に相続させる場合は「○○に相続させる」相続人以外であれば「◎◎に遺贈する」などです。

また,不動産の表記も登記簿の通りに記載しなければなりません。遺言を残したいけどよくわからない方は,はあとふる法務事務所までご相談ください。


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